「嗚呼、そんな仕事やってみた~い!」
「嗚呼、そんな仕事やってみた~い!」と思っても、簡単にできるものでもなく、いろんなご縁でいただけることになるのですが、ある意味筆者のライフワークともなりつつあるこの大命題、“非母国語歌唱”のディレクションのチャンスをまたまたいただくことになりました。
コリアン・シンガー・ソング・ライター、ヨアンナ。ピアノ、ギター、作詞(韓国語)、作曲と才能豊かで、日本語も堪能なシンガーの彼女ですが、母国語で歌ったときの説得力に、非母国語(すなわち日本語)のそれがどこまで近づけるのか。
思い起こすのは、5年前(2006)の暮れにブエノス・アイレスでやった、アルゼンチンの伝説女性シンガー、グラシェラ・スサーナのボーカル・ディレクション。彼女がもともと日本で活躍したのは70年代。当時無数の日本語曲を録音した彼女ですが、本当に日本が好きなんですね。あれからずっと日本の曲を歌い続けていたんだから。その歌入れも終盤を迎え、スペイン語の曲に取り掛かるやいなや、あまりの歌の素晴らしさに完全にモッテイカレタ私は、おもわず「スペイン語いいっすねえ~」とトークバックで口走ってしまったぁ。温厚な性格のスサーナは「スペイン語いいですかあ?」と苦笑い。ありゃっ、たいへん失礼しました。当たり前ですよね。天下のスサーナの母国語なんですから。それにしてもこの感動って何なのだろう。歌詞の意味がほとんどわからないスペイン語の方に、日本語で歌われるより打たれた。・・・とここまで書いて、楽器のパフォーマンスに置き換えるとごくごく自然なことではないかと気づく。普段「スペイン語」という楽器を演奏している人に、そこまで弾きなれてはいない「日本語」という楽器を弾いてもらっているわけだから、ことばの意味がどうこうより、まずパフォーマンスとして完成度が違うわけだ。それにしても、音楽は自由なものだから、「母国語ほど感情移入ができない外国語の歌唱で、その外国語を母国語とする人をどれだけ感じさせられるか」に挑むことは、今後も絶えることはないのでしょうが、いま昔のテレサ・テンの「つぐない」とかを聴くとすご過ぎて椅子から転げ落ちそうになるんですけど。